ノーベル賞を受賞した吉野彰さんとは一体何者?
今月9日、スウェーデン王立科学アカデミーはノーベル化学賞を旭化成名誉フェローの吉野彰さんや英オックスフォード大学教授であったジョン・グッドナイフさんらに贈ると発表しました。
リチウムイオン電池の開発に貢献したとしてノーベル化学賞受賞が決定した吉野彰さんですが、具体的に彼の功績は一体どのようなものなのでしょうか。
日本人として27人目のノーベル賞受賞者の吉野さんについて詳しくみていきましょう。
吉野彰さんのプロフィール
生年月日 1948年1月30日
出身地 大阪府吹田市
出身大学 京都大学工学部
所属 旭化成株式会社 名誉フェロー
技術研究組合 リチウムイオン電池材料評価研究センター 理事長
九州大学 グリーンテクノロジー研究教育センター 訪問教授
名城大学大学院 理工学研究科 教授
大阪府吹田市で生まれ育った吉野さんは、新たなものを生み出すような研究をしたいという理由と、当時すでに量子化学分野の権威として知られている福井謙一さんへの憧れもあって京都大学工学部石油科学科に入学したそうです。
大学在学中は考古学研究会に入り、遺跡現場の発掘に没頭し時間を費やしました。また、考古学研究会の活動を通す中で現在の奥さんとも知り合ったのです。
1972年4月京都大学大学院で修士課程を修了後、企業での研究開発に関わりたいとして現在の旭化成株式会社である旭化成工業に入社しました。
1985年にはリチウムイオン電池の原型を作り上げ、当初の想定では8ミリビデオだったそうですが現在では携帯電話やパソコンへと用途が劇的に広がったようです。
以前のリチウムイオン電池の開発
1980年台当時は携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器の開発と本格的な普及に先立ち、高容量かつ小型で軽量な二次電池(充電できる電池)の需要が高まっていました。
当時の技術では従来のニカド電池や、当時開発中であったニッケル水素電池などの二次電池では小型軽量化するには限界がありました。そこで、完全に新しいタイプの二次電池が必要となっていたのです。
リチウムは電気を帯びたイオンになりやすい性質であり、高電圧で高容量の二次電池に向いているされていましたが、高い反応性があり1970年代までは一次電池しか開発されていませんでした。
石油会社エクソンに勤めていたスタンリー・ウィッティンガム氏は金属リチウムを使った高容量の二次電池の開発を始め、正極に硫化チタンを、負極に金属リチウムを用いた二次電池を開発・公表しましたが、自然発火の可能性が完全に消すことができず、実用化にまではいたりませんでした。
吉野さんによるリチウムイオン電池の開発
1981年に吉野さんは、白川英樹さんが発見した電気を通すプラスチックのポリアセチレンに着目することで有機媒体を使った二次電池の負極に適していることを発見しました。
正極にはジョン・グッドナイフ氏らが発見した酸化コバルトとリチウムの化合物であるコバルト酸リチウムなどのリチウム繊維金属酸化物を正極に用いたリチウムイオン電池の原型を制作しました。
通常では負極から供給していたリチウムイオンを正極から供給する逆転が成功の鍵となったようです。
しかし、この原型ではポリアセチレンは電池容量が高くならないことや、ポリアセチレンは軽量ですが体積が大きいため小型化には向いていないという点がありました。
そして1985年、その問題対応するために開発を続けた吉野さんは新炭素材料を発見し、その炭素材料を負極としてコバルト酸リチウムを正極とする完全に新しいタイプの二次電池「リチウムイオン二次電池(LIB)」が誕生しました。
リチウムイオン電池の普及
商品化にあたって、自然発火の可能性を完全に消すことに成功しました。そこで初めてソニーの小型ビデオカメラに電池に採用し、1991年についに商品化されました。
その後は携帯電話の普及、インターネットが一般的になってきたこともあり劇的にリチウムイオン電池が売れるようになったのです。
最近では、携帯機器だけではなく自動車分野にも使用されているのです。電気自動車やプラグインハイブリッド車の動力源として活用されています。
現代日常的に使用しているリチウムイオン電池がもしなかったらここまで小型機器の発展はなかったでしょう。
最後に
吉野彰さんの開発によって現代のテクノロジー機器は支えられているということがわかりましたね。それだけの偉業を成し遂げたからこそのノーベル賞受賞というのは日本人として非常に誇らしく思います。
現在、吉野彰さんは、リチウムイオン電池の研究がさらに進むことによって、電気自動車の普及などにより環境問題への解決に貢献できる未来を期待しています。
吉野さんが開発したリチウムイオン電池によって環境問題が解決の方向へ向かっていくというのは非常に素晴らしいですね。今後のリチウムイオン電池の発展が楽しみです。